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小学生の息子が、国語の授業で「漁夫の利」ということわざを習ってきました。
その息子が妻に聞いていました。
「お母さん!先生が漁夫の利って言う言葉は、中国の昔話しからできた言葉だっていってたんだ。」
「どんな中国の昔話しなの?」
妻は私の顔を見ましたが、私は会社の仕事を持ち帰っていて、資料を作成中。
なので、妻は、息子に正しい知識を教えるために、パソコンで検索しはじめました。
ということで今回は、漁夫の利の意味。
そして、由来はどんな中国の昔話しで、どんな漢文になっているのかとその読み方もみていきましょう。
さらに、このことわざの使い方と例文も紹介します。
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目次
漁夫の利の意味と由来
最初に、このことわざの意味と、その由来をみていきましょう。
意味と由来がはっきりとすると、その後に紹介する漢文も理解しやすくなりますよ。
漁夫の利の意味
はずは、このこわざの意味を知っておきましょう。
二者が争っていると、第三者が苦労することなく利益を横取りすると言う意味です。
この「漁夫の利」という言葉を見ていて、司馬遼太郎氏が書いた名作『竜馬がゆく』の一場面を思い出しました。
幕末に、幕府と長州藩が争っていて、国力が低下すると、それをねらって、西洋の列強国が日本を植民地にしてしまう。
そんなことを、坂本竜馬が薩摩藩の西郷隆盛と話している場面です。
この場面では、幕府と長州藩が、シギとハマグリ。
西洋の列強国が漁夫ということになります。
坂本竜馬が、西洋の列強国の漁夫の利を防いでくれたということですね。
由来
このことわざは由来は、古代中国の前漢時代に、まとめられた『戦国索』の中の「燕策」からきています。
この書の中の「燕策」のところに、趙の国が燕の国を攻めようとしている時の話が書かれています。
それは、燕の国の蘇代が趙の国王である、惠王に燕の国を攻めないように説得している場面なんです。
それでは次に、この場面を漢文でみてみましょう。
ただ、漢文だけでは、意味がわりませんから、書き下し文(漢文の読み方)と、現代語訳でも、みてみることにしましょう。
この『戦国索』とは、古代中国の周の元年(紀元前476年)から215年間の戦国時代のことをまとめた書物です。
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漢文
趙且伐燕。
蘇代爲燕謂惠王曰、
「今者臣來過易水。
蚌正出曝。
而鷸啄其肉。
蚌合而箝其喙。
鷸曰、
『今日不雨、明日不雨、即有死蚌。』
蚌亦謂鷸曰、
『今日不出、明日不出、即有死鷸。』
両者、不肯相舎。
漁者得而并擒之。
今趙且伐燕。
燕趙久相支、以敝大衆。
臣恐強秦之爲漁父也。
願王之熟計之也。」
惠王曰、
「善。」
乃止。
さすがに漢文の白文では、意味がよくわかりません。
では、つぎは、この漢文の書き下し文(漢文の読み方)を紹介します。
書き下し文(漢文の読み方)
趙且に燕を伐たんとす。
蘇代燕の爲に惠王に謂ひて曰はく、
「今者臣來りて易水を過ぐ。
蚌正に出でて曝す。
而して鷸其の肉に啄む。
蚌合して其の喙を箝む。
鷸曰はく、
『今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん』と。
蚌も亦鷸に謂ひて曰はく、
『今日出ださず、明日出ださずんば、即ち死鷸有らん』と。
両者相舎つるを肯ぜず。
漁者得て之を并せ擒らふ。
今趙且に燕を伐たんとす。
燕趙久しく相支へ、以て大衆を敝れしむ。
臣強秦の漁父と爲らんことを恐るるなり。
願はくは王之を熟計せんことを」と。
惠王曰はく、
「善し」と。
乃ち止む。
さすがに書き下し文でも、よく意味がわかりませんね^^
漢文の先生なら、すらすらとわかるんでしょうけれど。
では、わかりやすく、現代語訳でみてみましょう。
現代語訳
趙が今まさに、燕を攻めようとしていた。
蘇代は燕のために趙の惠王に言いました。
「こちらの国に来るときに、易水を通りました。
ハマグリがちょうど、水面に出て日に当たっていました。
そして、シギがそのハマグリの肉を食べようとしていました。
そのとき、ハマグリは自分の貝殻を閉めて、シギのくちばしをはさんでしまいました。
シギが言いました。
『今日雨が降らず、明日も降らなかったら、ハマグリ、君はひからび、死んでしまうよ。』
それにたいし、ハマグリも言い返しました。
『今日くちばしがが、私の貝殻から出すことができずに、明日も出すことができなかったら、シギよ、君こそ死んでしまうよ。』
お互いにそう言いましたが、お互いとも相手にゆずることはしなかった。
そんなとき、漁師がきて、ハマグリとシギの両方を一緒に捕まえてしまいました。
今、趙は、すぐにでも燕を攻めようとしています。
趙と燕が長期間、戦いをし続ければ、そのために両国の国民が疲れ果ててしまいます。
そうなれば、強国の秦が、シギとハマグリを一緒に捕まえた、漁師のようになってしまいます。
すなはち、趙と燕は秦のものになってしまうでしょう。
私は、きっとそうなると恐れているのです。
なので、王が燕を攻めることを、どうするか考えてほしいのです。」
その話を聞いていた惠王は言いました。
「よくわかった。」
そして、王は燕に攻め入ることをやめました。
いや~。
現代語訳でも、よく読まないと、ちょっと難しいかも^^
考えてみると、燕の使者は、「漁夫の利」のたとえ話をして、お互いに争うと共倒れになりますよと、言っているんです。
ハマグリとシギのたとえ話で、みごと、争いを防いでしまいました。
日本で言うと、豊臣秀吉の軍師の竹中半兵衛、黒田官兵衛みたいですね^^
漁夫の利の使い方と例文
それでは、「漁夫の利」の使い方と例文をみていきましょう。
「佐幕だ攘夷だと、おたがい自分のことしか考えずに争っていると、国が滅びてしまう。
いや、滅びる前に、西洋の列強国が漁夫の利を得て、日本をのっとってしまうぞ!」
「同じ政党なのに、あの2つの派閥は、派閥争いばかりして、国民の信用を失ってしまった。
そのすきをかいくぐり、野党第一党のA党が政権をとってしまった。まさに、漁夫の利だね。」
おたがいに争っていると、まわりが見えなくなってしまいます。
そんなときに、外から利益をさらってしまう。
そんな使い方をすることになります。
漁夫の利を持っていかれた後、争っていた人たちは、ぼうぜんとしてしまいますね。
あなたも、ご用心ご用心^^
類語
では、最後に「漁夫の利」の類語をみてみましょう。
類語を知ることで、知識が広がりますから。
- 鷸蚌(いつぼつ)の争い
- 犬兎(けんと)の争い
- 田父(でんぷ)の功
鷸蚌(いつぼつ)の争い、犬兎(けんと)の争い、田父(でんぷ)の功。
これは3つとも、争いとは関係ない第三者に利益をもっていかれることを意味する、ことわざです。
ちなみに、鷸蚌(いつぼつ)の争いの鷸とは鳥のシギ、蚌とはどぶ貝のことです。
あなたも、ちょとまわりを見わたしてみませんか。
思いがけない、お得なことがあるかも^^
まとめ
漁夫の利の意味は、二者が争っている。
その間に、そ~っと、外野の第三者が、利益をさらって行ってしまうことです。
そして、このことわざは、古代中国の前漢時代に、まとめられた『戦国索』の中の「燕策」。
これに書かれている故事が由来となっています。
このことわざって、小学4年生で習うことわざです。
先生が、どんなふうに、このことわざのことを教えているのか、興味があります。
「ずるいよね~。」と教えているのか。
はたまた、「これぞ、人生をうまく渡る手本だ。」なんて教えたりして^^
ことわざって、人生のいろんなことから、生まれてきた知恵の言葉です。
ことわざは、人生の暗い長~トンネルに入って、出口が見えない時の、灯りになってくれます。
ことわざを、たくさん、覚えて人生に活かしましょうね^^
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